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2018.10.02 Tuesday

『即日設計・ONEワク』のつづき

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     設計の面白さを伝えたい、次世代の建築家を育成する手助け・協力をし、建築家として若い世代の可能性を広げる役目を果たそうと、2018年8月4日に日本建築家協会北陸支部富山地域会として初の試みで開催いたしました”即日設計ONE DAY WORKS「ONE ワク」”。

     準備から当日まで、大変お世話になりました先生方から講評をいただきましたので掲載させていただきます。次につながる一歩!となった一日だったと思います。沢山のお力をいただき、本当に有難うございました。

    JIA富山地域会 道古麻紀子

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    ONEワク」最大の特徴であり良かったところは、建築家の方も高校生たちも“キャリア”にバラツキがあったことだ。この“キャリア”というのは実務経験や学年・学習段階のことを指すが、このバラツキが思わぬ化学反応を生んでいた。まともに図面を描いたこともない高校1年生や、もう何十年も模型なんてつくっていないというベテラン建築家の方たちが、ごちゃ混ぜになって即日設計イベントをやろうというのだから、けっこう無茶苦茶な話だ(笑)。しかし、どの会員の方もキャリアに関係なく、熱い想いで高校生一人一人に向き合ってくださった。一緒に模型を作り、平面図とはこういうものだと自分で描いて説明し、エスキスでもプレゼンでも、どんなアイデアでも真剣に聞き入り、まじめに議論してくださる。本当に頭が下がった。そんな“建築大好きな大人たち”を前にしたら生徒たちも真剣になるしかない。もはや学年など関係なく「自分の建築をつくるのだ」とゴールに向かって全力で進むしかない。生徒のクリエーションに対する潜在能力が引き上げられているのをリアルに感じ、感動とともに嫉妬もした。私も初任の頃は、生徒と同じ目線で考え悩み、手を動かし行動で示しそうと努めていたが、少しずつその大切な“やってみせる”を忘れていたのだと気づかされた。

    決勝のプレゼンまで進めなかった生徒の多くが「悔しい」とはっきり言っていたのも印象的であった。それこそ1年生のくせにそんなことを言っている連中に、生意気だなぁとも思ったが、そんな気持ちが湧いてくるなんてえらくまとも(?)でびっくりしたのだ。最近の私は、彼らのことを“悟り世代”と言われる新人類だと思っていたのだ(笑)。生徒たちの熱い気持ちが芽生えた瞬間に立ち会えた。教員としてこんな嬉しいことはそうあることではない。悔しさこそ次につながる大きな原動力である。

    また、参加者一人一人に講評文が添えられたことも素晴らしい。一般的な設計コンペなどでは入賞者への講評はあるものの参加者全員に言葉がかけられることはほぼない。これが配布されたのが2学期の始業式であることも教育的にとても重要なポイントであった。達成感や敗北感、あのときのさまざまな感情を思い出しながら新学期のスタートを切れるからである。参加した生徒たちの中でも、基本をしっかり学ぼうとする者、アイデアの引き出しを増やそうとする者、大学進学を自分の選択肢に加える者など、全員とまでは言えないが数名は顔つきも学ぶ姿勢も間違いなく変わった。

    たった1日だけのイベントは、こうやって子どもたちの日常や今後の進路に大きな変化と様々な形で価値を生み出したといえる。大成功に他ならない。参加していただいたJIA会員の方々には、高校生の教育に深く携わっていただいたこと、今なお感謝の念に堪えない。

     

    個人的なことになるが、私が大学を卒業し、富山工業高校の建築科(現在は建築工学科)に新採教員として来たのが13年前。大学で意匠を学んできた私は、実社会では勝負せず、偉そうにも建築家の卵を育てる道に進んだ。しかし高校でのデザイン教育の難しさと限界をこれまでずっと感じてきた。高校生もデザインは好きだけど難しい話になると逃げてしまうし、コンペの指導にしても、建つはずもない建築を考えて何の意味があるのか、と言わんばかりの他学科の先生方からの冷ややかな視線も気になった。そもそも意匠をやっていた先生など工業高校に必要とされていないような気持ちもしていた。「建築が楽しい」「建築をもっとやってみたい」そんなシンプルな気持ちを子どもたちに持たせられないことに相当な苛立ちがつづいていたし、何となく閉鎖的な学校教育にも息苦しさを感じていた中で、「建築甲子園優勝」というきっかけが今回の「ONEワク」開催につながった。

    だからなのか、何ともいえない感情がイベント中ずっとこみ上げていた。たくさんの建築家の方たちと、「高岡工芸」だとか「富山工業」だとかの学校の垣根を越えて高校生が集まり、ものすごい熱量で建築をつくろうとしている。その光景が、13年間の見慣れた教室や実習室の中で繰り広げられている。心が震え幾度も涙が出そうになった。

    ONEワク」は高校生だけでなく私にも大きな希望を与えてくれたのだ。建築デザイン教育が、真に「生きた教育」だということが目の前でしっかりと証明されたからである。

    このイベントを今後どうつなげていけば良いのかが大事なのだが、まだちゃんと消化できていない部分も多々ある。しっかりと受け止め、考えていくつもりだ。

     

    富山県立富山工業高等学校

    建築工学科 学科長 藤井 和弥

     

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     日本建築家協会北陸支部富山地域会の皆様には平素より本校の教育活動にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

     8月4日に開催されましたONE・ワクでは、富山県建築界の第一線でご活躍されている皆様に本校生徒がご指導いただけるという大変貴重な機会をいただき、感謝申し上げます。生徒は、普段の学校生活と違う環境において、最初は不安な様子でしたが、皆さんとエスキスを進めるうちにみるみる生き生きとした表情になり、とても楽しみながら作品製作に取り組む様子を見て、私たち教員は、1日の中で成長していく生徒の様子に驚くばかりでした。素晴らしい環境の下、普段はなかなか見ることのない生徒の表情に出会えた、そんな暑く、熱い1日でした。エスキスから模型製作、プレゼンテーションまでを1日でやり遂げることができるかどうか、不安な面もありましたが、会員の皆様のご指導の下、課題を完成させることができ、そのことは生徒の自信にもつながったように思います。

    ONE・ワク参加後の生徒の様子ですが、これまで以上に前向きに学校生活に取り組んでいます。講評を手渡した際には、まず一人ひとりにいただいたことに大変喜んで感謝しており、「やった!!」「褒められている!!」など、嬉しそうに内容を確認する生徒の姿が印象的でした。その後、意欲的に新たなコンペに挑戦する者、主体的に外部団体が主催する講演会に参加する者、進路に向け一生懸命頑張る者など、皆様方からの「実践的な教育」を受け、それぞれが「建築」について考え、よい意味で進むべき道を模索しているように感じます。

    この夏の経験が、今後の彼らの長い人生のどこかで必ず生かされる日がくることと思います。このような貴重な機会を設けていただきましたJIAの皆様方には本当に感謝申し上げます。熱い夏を本当にありがとうございました。

     

    富山県立高岡工芸高等学校

    建築科科長 井村 笑子

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